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妊娠中のつわり(悪阻)対策と漢方|無理をせず、食事と休養、必要に応じた医療で乗り切るために
はじめに
つわりは、妊娠初期にみられる吐き気や嘔吐、食欲低下などの総称です。多くの妊婦さんが経験する症状で、海外のガイドラインでは吐き気は妊婦の約50〜80%にみられるとされています。ただし、症状の強さや続く期間には大きな個人差があります。
つわりがあるからといって、必ずしも異常というわけではありません。一方で、水分が取れない、体重が大きく減る、日常生活が成り立たないといった場合は「妊娠悪阻」として医療的な対応が必要になることがあります。つらさを我慢しすぎないことが大切です。
漢方は、妊娠中の不調に対して医師の管理下で用いられることがあります。ただし、すべての漢方薬が妊娠中に自己判断で使えるわけではありません。本記事では、一般向けにわかりやすく、つわりの基本的な対処法と、漢方を検討する際の考え方を整理してご紹介します。
つわりとは

つわりは、妊娠5〜6週ごろに始まり、12〜16週ごろに軽くなることが多いとされています。米国産婦人科学会(ACOG)の一般向け情報でも、通常は妊娠9週までに始まり、多くの人で14週ごろまでに軽快するとされています。
症状は、吐き気、嘔吐、食欲不振、においに敏感になる、疲れやすいなどさまざまです。朝だけつらい人もいれば、一日中気分が悪い人もいます。食べられる物が限られる時期でもあるため、「理想的な食事」にこだわりすぎず、まずは水分と少しでも食べられる物を確保することが大切です。
原因はひとつではありません
つわりのはっきりした原因はまだ完全にはわかっていませんが、妊娠に伴うホルモン変化が関係すると考えられています。ACOGでも、ホルモンの増加が一因になりうると説明されています。
一方で、ストレスや疲労、睡眠不足、空腹、におい刺激などで症状が強く感じられることもあります。つまり、つわりは「気のせい」ではありませんが、生活環境や体調の影響でつらさが増すことはあります。
まずは日常生活でできること
つわり対策の基本は、無理をしないことです。少量を何回かに分けて食べる、空腹時間を長くしすぎない、においの強い料理を避ける、こまめに水分を取る、疲れたら休む、といった工夫が役立ちます。
食事は「栄養バランスを完璧にする」より、「今、食べられるものを少しでも取る」ことを優先して大丈夫です。クラッカー、トースト、麺類、果物、ゼリー、スープ、冷たい飲み物など、受けつけやすい物は人によって違います。冷たい物が楽な方もいるため、無理に温かい食事に限定する必要はありません。
食べ物・飲み物の考え方

生姜は、つわり症状の軽減に役立つ可能性がある補完的な方法として、産婦人科診療ガイドラインでも「考慮される」とされています。飲み物や料理に少量加えるなど、無理のない範囲で試すのは一つの方法です。
一方で、脂っこい料理やにおいの強い食品、空腹を悪化させる食べ方は、症状をつらくすることがあります。カフェインは妊娠中の摂りすぎに注意が必要ですが、「緑茶やコーヒーは必ずつわりを悪化させる」とまでは言えません。気分が悪くなるなら控え、問題なければ量に気をつけながら調整しましょう。
漢方を検討する際の考え方

漢方では、吐き気そのものだけでなく、胃の弱り、のどのつかえ感、食欲低下、疲れやすさ、水分代謝の乱れなども合わせてみながら処方を考えます。同じ「つわり」でも、合う処方は人によって異なります。
大切なのは、「妊娠中でも漢方なら何でも安全」と考えないことです。妊婦への使用は個別判断が必要で、古くから使われている処方がある一方、安全性が十分に確立していないものもあります。市販薬やサプリメントを自己判断で追加せず、産婦人科医や漢方に詳しい医師・薬剤師へ相談しましょう。
つわりで相談されることのある漢方薬の例
小半夏加茯苓湯(しょうはんげかぶくりょうとう)
医療用漢方の添付文書上でも「妊娠嘔吐(つわり)」に用いられる処方です。吐き気や嘔吐が前面に出ている時に、医師が選択肢として検討することがあります。
人参湯(にんじんとう)
添付文書上で「悪阻(つわり)」が効能・効果に含まれる処方です。食欲低下や胃腸の弱り、冷えを伴うようなケースで、体質をみながら使われることがあります。
半夏厚朴湯、六君子湯、茯苓飲合半夏厚朴湯など、症状に応じて他の処方が検討されることもありますが、妊娠中の使用は必ず主治医と相談のうえで判断すべきです。どの処方にも「妊婦または妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与する」といった注意が記載されています。
受診の目安

次のような場合は、漢方や食事の工夫だけで様子を見ず、早めに産婦人科へ相談してください。水分がほとんど取れない、嘔吐が続いて食べられない、尿量が減る、めまいが強い、急に体重が減る、動けないほどつらい、という時は脱水や妊娠悪阻の可能性があります。
妊娠悪阻では、点滴による水分補給や薬物療法が必要になることがあります。産婦人科診療ガイドラインでは、悪心の緩和にビタミンB6が挙げられており、重症度に応じた医療介入が重要です。
妊娠中の漢方で注意したいこと

元の原稿では「当帰・大黄・桃仁などは避けるべき」と一括して書かれていましたが、この表現は単純化しすぎです。妊娠中に注意が必要な生薬や処方はありますが、すべてを一律に禁止できるわけではなく、逆に妊娠中に使われる処方もあります。
そのため、妊娠中の漢方は"成分名だけで自己判断する"のではなく、症状、妊娠週数、既往歴、併用薬を踏まえて専門家が個別に判断する、という理解が適切です。
まとめ

つわりはよくある妊娠症状ですが、つらさの程度は人それぞれです。まずは休養、少量頻回の食事、水分補給、におい刺激を避けるといった基本対応を行い、無理をしないことが大切です。
漢方は選択肢の一つになりえますが、「妊娠中でも自然由来だから安心」とは言えません。小半夏加茯苓湯や人参湯のように、つわりに用いられる処方もありますが、必ず医師や薬剤師と相談しながら使いましょう。症状が強い場合は、我慢せず早めに産婦人科へ相談してください。
運龍堂では、妊娠中の体調変化に配慮しながら、漢方相談を行っています。必要に応じて産婦人科での診療と併用しながら、無理のない方法を一緒に考えていくことが大切です。