妊娠がわかったら、お勧めの食生活

妊娠がわかったとき、喜びとともに「これから赤ちゃんのために何を食べればいいのだろう」という不安を感じる方も多いのではないでしょうか。妊娠中は「これを食べてはいけない」「〇〇を摂った方がいい」と情報が多く、迷ってしまう方も少なくありません。


今回は、そんな疑問に東洋医学と現代栄養学の両面からお答えします。運龍堂では、長年にわたり妊活中の方々や妊娠中の方々をサポートしてまいりました。漢方や薬膳の知恵を取り入れながら、妊娠期間中の理想的な食生活についてお伝えしたいと思います。


妊娠中の身体の変化と栄養の重要性


妊娠すると、女性の身体は劇的に変化します。ホルモンバランスが変わり、血液量が増加し、赤ちゃんに栄養を届けるために身体全体が働き始めます。この時期に適切な栄養を摂取することは、赤ちゃんの健やかな成長と、お母さん自身の健康維持のために欠かせません。


東洋医学では、妊娠中は「気」「血」「腎精」が特に重要とされています。


「気」はエネルギーの流れ、


「血」は栄養を運ぶ血液、


「腎精」は体のエンジンのようなもの。


この3つを整えることで、妊娠中の心と体が安定します。バランスよく補い、巡らせることが、妊娠中の健康維持の鍵となります。


妊娠期間中にお勧めの食品


主食・穀類


玄米や雑穀米は、白米に比べてビタミンB群や食物繊維が豊富です。特にビタミンB群は、赤ちゃんの神経系の発達に重要な役割を果たします。ただし、玄米は消化に時間がかかるため、胃腸の弱い方は白米と混ぜて炊くなど工夫しましょう。


オートミールも、鉄分や食物繊維が豊富で、妊娠中の便秘予防にも効果的です。朝食に取り入れやすく、フルーツやナッツと組み合わせれば栄養バランスも良くなります。


タンパク質源


妊娠中は通常より多くのタンパク質が必要です。良質なタンパク質を含む食品を積極的に摂りましょう。


大豆製品(豆腐、納豆、味噌)は、植物性タンパク質の優れた供給源です。特に納豆は、赤ちゃんの骨や歯の形成に必要なビタミンKも豊富に含んでいます。


魚介類では、サケ、サバ、イワシなどの青魚がお勧めです。これらにはDHA・EPAといったオメガ3脂肪酸が豊富で、赤ちゃんの脳や神経系の発達を助けます。ただし、水銀含有量の多い大型魚(マグロ、メカジキなど)は控えめにしましょう。


鶏肉や赤身の牛肉も、鉄分とタンパク質を同時に摂取できる優れた食材です。特に妊娠中期から後期にかけては、鉄分不足による貧血に注意が必要です。


は、完全栄養食品と呼ばれるほど栄養バランスに優れています。ビタミンAやビタミンD、葉酸なども含まれており、妊娠中に積極的に摂りたい食品の一つです。


野菜・きのこ類

緑黄色野菜(ほうれん草、小松菜、ブロッコリー、にんじん)は、葉酸、鉄分、ビタミンA、ビタミンCが豊富です。特に葉酸は、妊娠初期の赤ちゃんの神経管形成に不可欠な栄養素です。


根菜類(さつまいも、大根、ごぼう、れんこん)は、身体を温め、気血を補う働きがあるとされています。食物繊維も豊富で、妊娠中の便秘対策にも効果的です。


きのこ類(しいたけ、まいたけ、えのき)は、ビタミンDや食物繊維、ミネラルが豊富です。カロリーが低く、満腹感も得られるため、体重管理にも役立ちます。


海藻類

わかめ、昆布、ひじきなどの海藻類は、カルシウム、鉄分、ヨウ素が豊富です。特にヨウ素は甲状腺ホルモンの生成に必要で、赤ちゃんの成長に重要な役割を果たします。ただし、過剰摂取は逆効果なので、適量を心がけましょう。


果物・ナッツ

季節の果物(りんご、みかん、いちご、ぶどう)は、ビタミンCや食物繊維の良い供給源です。ただし、果物には糖分も多く含まれているため、食べ過ぎには注意が必要です。


ナッツ類(アーモンド、くるみ、カシューナッツ)は、良質な脂質、ビタミンE、マグネシウムが豊富です。小腹が空いたときのおやつとしても最適ですが、カロリーが高いため、1日に片手のひらに乗る程度の量を目安にしましょう。


発酵食品

ヨーグルト、キムチ、ぬか漬けなどの発酵食品は、腸内環境を整える働きがあります。妊娠中は便秘になりやすいため、積極的に摂ることをお勧めします。ヨーグルトはカルシウムの補給源としても優れています。


 

妊娠期間中に避けた方が良い食品


生もの・加熱不十分な食品

生肉、生魚(刺身)、生卵は、食中毒のリスクがあるため避けましょう。特にトキソプラズマやリステリア菌による感染症は、赤ちゃんに影響を及ぼす可能性があります。魚は十分に加熱し、卵も半熟ではなく完全に火を通したものを選びましょう。


生ハムやスモークサーモンなどの非加熱食品も、リステリア菌のリスクがあるため控えめにしましょう。


ナチュラルチーズ

加熱殺菌されていないナチュラルチーズ(カマンベール、ブルーチーズなど)も、リステリア菌のリスクがあります。プロセスチーズは加熱殺菌されているため安全です。


水銀を多く含む魚

マグロ(特に本マグロ)、メカジキ、金目鯛などの大型魚は、水銀含有量が多いため、週1回程度に控えましょう。水銀は赤ちゃんの神経系に影響を及ぼす可能性があります。


カフェイン

コーヒー、紅茶、緑茶、エナジードリンクに含まれるカフェインは、過剰摂取を避けましょう。1日200mg(コーヒーカップ2杯程度)までが目安とされています。ノンカフェインのハーブティーや麦茶に切り替えるのもお勧めです。


アルコール

アルコール類は、妊娠中は完全に避けましょう。少量でも赤ちゃんの発達に影響を及ぼす可能性があります。


その他注意が必要な食品

レバーやうなぎは、ビタミンAが豊富ですが、過剰摂取は赤ちゃんの奇形リスクを高める可能性があります。食べ過ぎに注意しましょう。


辛いもの、脂っこいものは、胃腸に負担をかけやすく、つわりを悪化させることがあります。体調に合わせて調整しましょう。


 

妊娠期間中にお勧めの漢方・薬膳素材・健康食品


東洋医学の知恵を活かした漢方や薬膳素材、健康食品は、妊娠中の身体をサポートする強い味方となります。運龍堂では、以下のような素材をお勧めしています。


牡蠣肉エキス

牡蠣肉エキスは、亜鉛やタウリン、グリコーゲンが豊富に含まれています。亜鉛は赤ちゃんの細胞分裂や成長に不可欠なミネラルで、免疫力の維持にも役立ちます。また、タウリンは肝機能をサポートし、妊娠中の疲労回復にも効果的です。


東洋医学では、牡蠣は「腎」を補い、精を養う働きがあるとされています。妊娠中は腎精が消耗しやすいため、牡蠣肉エキスで補うことは理にかなっています。


鹿茸(ろくじょう)

鹿茸は、鹿の角の若い部分を乾燥させたもので、強壮作用に優れた貴重な生薬です。気血を補い、腎陽を温める働きがあり、妊娠中の冷えや疲労感の改善に役立ちます。


ただし、鹿茸は作用が強いため、妊娠初期や体質によっては使用を控えた方が良い場合もあります。必ず専門家に相談してから使用しましょう。


スピルリナ

スピルリナは、藍藻類の一種で、タンパク質、ビタミン、ミネラル、必須アミノ酸がバランスよく含まれたスーパーフードです。特に鉄分や葉酸が豊富で、妊娠中の貧血予防に効果的です。


また、スピルリナには抗酸化作用があり、妊娠中の酸化ストレスから身体を守る働きもあります。つわりで食事が十分に摂れないときの栄養補給としてもお勧めです。


スクアレン

スクアレンは、深海鮫の肝油から抽出される成分で、優れた酸素供給能力を持っています。妊娠中は赤ちゃんに酸素と栄養を届けるため、血液循環が重要になります。スクアレンは細胞の新陳代謝を促進し、免疫力の向上にも役立ちます。


黒豆・なつめ

黒豆は、血を補い、腎を養う働きがあるとされ、妊娠中の滋養強壮に適しています。黒豆茶として飲むのもお勧めです。


なつめは、気血を補い、脾胃の働きを助ける働きがあります。妊娠中の貧血予防や疲労回復に効果的で、そのまま食べたり、お茶に入れたりして摂取できます。


紅花・クコの実

紅花は、血行を促進し、冷えを改善する働きがあります。ただし、妊娠初期は使用を控えた方が良い場合もあるため、専門家に相談しましょう。


クコの実は、肝腎を補い、目の疲れにも効果的です。ドライフルーツとして食べたり、スープに入れたりして摂取できます。


当帰・芍薬

当帰芍薬は、血を補い、血行を改善する代表的な生薬です。多くの婦人科系の漢方薬に配合されており、妊娠中の冷えや血虚の改善に役立ちます。


山芋・蓮の実

山芋は、脾胃を補い、気を養う働きがあります。消化吸収を助け、妊娠中の栄養補給をサポートします。


蓮の実は、脾を補い、腎を固める働きがあり、安胎(胎児を安定させる)作用があるとされています。


 

妊娠期間の食生活で気をつけたいポイント


バランスの良い食事を心がける

一つの食品に偏らず、主食、主菜、副菜をバランスよく摂ることが大切です。「一汁三菜」を基本とした和食スタイルは、妊娠中の食事として理想的です。


少量ずつ、こまめに食べる

つわりがある時期や、お腹が大きくなって胃が圧迫される後期には、一度に多く食べられないこともあります。そんなときは、少量ずつこまめに食べることで、必要な栄養を確保しましょう。


つわりのときの食べ方

つわりで食欲がないときは、無理をせず食べられるものを食べることが大切です。


消化の良いおかゆは、胃腸に優しく、梅干しや塩昆布を添えると食べやすくなります。


白湯は、身体を温め、胃腸の働きを整えます。朝起きてすぐにゆっくり飲むと、一日の始まりが楽になります。


しょうが湯は、吐き気を和らげる働きがあり、つわりの症状緩和に役立ちます。すりおろした生姜に蜂蜜を加えてお湯で割ると飲みやすくなります。


また、冷たいものや酸味のあるもの(レモン水、グレープフルーツなど)が食べやすいという方も多くいらっしゃいます。自分の身体が欲するものを、少量ずつ摂るようにしましょう。


水分補給を忘れずに

妊娠中は血液量が増えるため、水分補給が重要です。1日1.5〜2リットルを目安に、こまめに水分を摂りましょう。ただし、冷たい飲み物は身体を冷やすため、常温や温かい飲み物がお勧めです。


塩分・糖分の摂りすぎに注意

妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病のリスクを避けるため、塩分と糖分の摂りすぎには注意が必要です。薄味を心がけ、出汁の旨味を活かした調理法を取り入れましょう。


体重管理を意識する

適切な体重増加は、妊娠の経過と赤ちゃんの健康に重要です。BMIに応じた推奨体重増加量を目安に、バランスの良い食事と適度な運動で体重管理を行いましょう。


心を整えるメンタルケア

妊娠中は、ホルモンバランスの変化により、気持ちが不安定になることがあります。東洋医学では、「気の巡り」を整えることで、心も穏やかになると考えられています。


香りでリラックス


ラベンダーやカモミールなどの優しい香りは、気持ちを落ち着かせてくれます。ただし、妊娠中は使用を控えた方が良いアロマもあるため、専門家に相談しましょう。


深呼吸・ゆったりした呼吸法


深くゆっくりとした呼吸は、自律神経を整え、リラックス効果をもたらします。朝晩5分ずつ、静かな場所で深呼吸をする時間を作りましょう。


ハーブティー


ルイボスティーやたんぽぽ茶など、ノンカフェインのハーブティーは、気分転換にもなり、心を穏やかにしてくれます。温かい飲み物をゆっくり味わう時間は、それ自体がリラックスタイムになります。


不安なことがあれば、一人で抱え込まず、ご家族や専門家に相談することも大切です。


 

まとめ


妊娠は「命を育てる」大切な期間。だからこそ、我慢や不安ではなく、"安心して楽しめる"食生活を大切にしてほしいと私たちは考えています。


妊娠中の食生活は、赤ちゃんの健やかな成長とお母さんの健康維持の基盤となります。バランスの良い食事を心がけ、避けるべき食品には注意を払いながら、漢方や薬膳の知恵も取り入れて、充実したマタニティライフを送りましょう。


運龍堂では、妊娠中の方お一人おひとりの体質や体調に合わせた、食生活のアドバイスや漢方薬、健康食品のご提案を行っております。不安なことやお困りのことがございましたら、お気軽にご相談ください。


妊娠という特別な時期を、心身ともに健やかに過ごせるよう、私たちがサポートいたします。

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