- 妊活
- 漢方
妊活中の漢方、いつ・どう飲む?|効果を最大化する服用のコツと体質別の選び方
妊活に取り組むご夫婦は年々増えており、国内では体外受精などの生殖補助医療によって生まれる赤ちゃんが、今や約11人に1人にのぼると言われています。一方で、特別な治療に進む前から「冷え」「月経不順」「ストレスによる不調」を整え、妊娠しやすい身体づくりを目指したいと考える方も多くいらっしゃいます。そうした体質改善の場面で古くから役立てられてきたのが漢方です。ただし漢方は「飲めばよい」というものではなく、飲むタイミングや体質(証〈しょう〉)との相性によって効果が大きく変わります。本コラムでは、妊活における漢方の正しい飲み方と体質別の選び方を、運龍堂の視点から解説します。
妊活において漢方の飲み方が重要な理由

西洋医学的な観点から
妊娠は、脳の視床下部・下垂体から分泌されるホルモンが卵巣に働きかけ、排卵と子宮内膜の準備を周期的に整えることで成立します。一般的な月経周期は約28日で、低温期(卵胞期)と高温期(黄体期)に分かれ、基礎体温は高温期に約0.3〜0.5度上昇します。
漢方薬の多くは生薬由来成分を含み、その吸収は食事の影響を受けます。空腹時は胃内が酸性に保たれ、有効成分が腸内細菌によって活性体へ変換されやすいため、一般に食前または食間(食後約2時間)の服用がすすめられます。また成分の血中濃度は服用後数時間でピークに達し、半減期を経て低下するため、1日2〜3回に分けて一定の濃度を保つことが効果の安定につながります。
東洋医学(漢方)の観点から

東洋医学では、妊娠しやすい身体を「気〈き〉・血〈けつ〉・水〈すい〉」がバランスよく巡る状態と考えます。エネルギーが不足する気虚〈ききょ〉では疲れやすく基礎体力が低下し、血が不足する血虚〈けっきょ〉では子宮内膜を養う栄養が足りず、月経量の減少や冷えが起こりやすくなります。生命力や生殖機能の源を司る腎〈じん〉が弱る腎虚〈じんきょ〉は、加齢に伴う妊娠力の低下と深く関わります。
さらに血の巡りが滞る瘀血〈おけつ〉は、月経痛や塊、子宮の血流不足の一因となります。漢方では、こうした体質の偏りを「未病〈みびょう〉」(病気に至る前の不調)の段階で整え、妊娠に適した土台を時間をかけて育てます。だからこそ、自分の証に合った処方を、適切なタイミングで継続して飲むことが何より大切なのです。
主な症状・妊活で起こりがちな不調

妊活中によく見られる不調には、手足やお腹の冷え、月経周期の乱れ、月経痛や経血の塊、排卵期のおりものの減少、基礎体温が二相に分かれにくいといった点が挙げられます。加えて、仕事や治療によるストレスからくるイライラ・不眠・気分の落ち込み、肩こりや頭痛、疲れやすさ、むくみなども多く相談されます。これらは検査では異常が出にくい「未病」のサインであることが多く、東洋医学的な体質の偏りとして捉えることで、漢方による調整の糸口が見えてきます。
服用可能な漢方薬・薬膳素材

ここでは妊活で用いられる代表的な漢方処方を5つご紹介します。いずれも体質(証)との相性が重要ですので、選ぶ際は専門家にご相談ください。
① 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
当帰〈とうき〉・芍薬〈しゃくやく〉・川芎〈せんきゅう〉・茯苓〈ぶくりょう〉・蒼朮〈そうじゅつ〉・沢瀉〈たくしゃ〉の6種からなる、妊活の定番処方です。血を補い巡りを助けながら、余分な水分を捌〈さば〉いてむくみや冷えを和らげます。色白で疲れやすく、冷え症でむくみやすい、月経周期が安定しにくい血虚・水滞〈すいたい〉タイプの方に適します。
② 温経湯(うんけいとう)
当帰・芍薬・川芎・人参〈にんじん〉・桂皮〈けいひ〉・阿膠〈あきょう〉など多くの生薬を含み、その名の通り「経〈けい〉を温める」処方です。下腹部の冷えや手足のほてり、唇の乾燥、月経不順を伴う方に向きます。冷えと乾燥が混在し、子宮を温めて潤いを与えたい血虚・虚寒〈きょかん〉タイプの妊活によく用いられます。
③ 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
桂皮・茯苓・牡丹皮〈ぼたんぴ〉・桃仁〈とうにん〉・芍薬の5種で構成され、滞った血(瘀血)を巡らせる代表処方です。比較的体力があり、のぼせやすく、月経痛・経血の塊・肩こりが強いタイプに適します。子宮の血流改善を目的に使われますが、瘀血を動かす生薬を含むため、妊娠が判明したら服用の継続は必ず専門家に確認してください。
④補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
黄耆〈おうぎ〉・人参・白朮〈びゃくじゅつ〉・当帰・柴胡・升麻〈しょうま〉などで構成され、消化機能を高めて気を補う「気剤の王」と称される処方です。疲れやすく食欲が落ちやすい、体力・気力が不足した気虚タイプの土台づくりに適します。基礎体力を底上げし、妊娠を支える体力を養う目的で用いられます。
薬膳素材

日々の食事に取り入れやすい食品扱いの薬膳素材をご紹介します。なつめ(大棗〈たいそう〉)は気と血を補い、心を落ち着かせる代表素材で、刻んでお茶やスープ、おかゆに入れると手軽です。
クコの実は肝と腎を養い目や生殖機能を助けるとされ、ヨーグルトやお茶に散らすと彩りよくいただけます。生姜〈しょうが〉は身体を芯から温め血流を促し、加熱した乾姜〈かんきょう〉やすりおろしを汁物や紅茶に加えるのがおすすめです。
黒豆〈くろまめ〉は補腎・補血の働きがあり、煮豆や黒豆茶にすると続けやすい素材です。山芋(山薬〈さんやく〉)は気を補い胃腸と腎を労わるとされ、とろろやスープに適します。鶏肉〈とりにく〉は気血を補う良質なたんぱく源で、生姜やなつめと合わせたスープが定番です。
黒ごま〈くろごま〉は腎を養い潤いを与えるとされ、ご飯やおひたしにふりかけると無理なく取り入れられます。これらを少量ずつ毎日続けることが、体質改善への近道です。
注意が必要な漢方薬

妊娠中、または妊娠している可能性のある時期には、慎重な扱いを要する生薬があります。代表的なのが瀉下〈しゃげ〉作用(便通を促す作用)の強い大黄〈だいおう〉や芒硝〈ぼうしょう〉で、強い腸の収縮が子宮の収縮を誘発する恐れがあります。
麝香〈じゃこう〉は強い血流改善の作用をもち、古くから妊娠中は避けるべきとされてきました。牡丹皮〈ぼたんぴ〉・紅花〈こうか〉・桃仁〈とうにん〉といった血の巡りを強く動かす活血薬は、子宮の血流に作用するため流産のリスクが懸念されます。
また身体を強く温める附子〈ぶし〉(トリカブト由来)は作用が鋭く、用量管理を誤ると母体への負担が大きくなります。これらを含む処方は、妊娠が判明した時点で自己判断による継続を避け、必ず医師・薬剤師に相談してください。
おすすめの食品

栄養面では、妊娠初期の神経管閉鎖障害のリスク低減に関わる葉酸を、ほうれん草・ブロッコリー・枝豆・アボカドなどから意識して摂りましょう。月経で失われやすい鉄分は、赤身肉・レバー・あさり・小松菜などから補い、ビタミンCを含む食品と合わせると吸収が高まります。
身体の材料となるたんぱく質は、鶏肉・魚・卵・大豆製品からバランスよく確保し、抗酸化に関わるビタミンEはアーモンドやかぼちゃ、植物油から取り入れると良いでしょう。東洋医学の視点では、生殖の源である腎を養う「補腎」の食品として、黒豆・黒ごま・くるみ・山芋・栗・海老などの黒い食材や種実類が役立ちます。
血を補う「補血」には、なつめ・クコの実・ほうれん草・赤身肉・にんじんなどが適します。色や性質を意識し、温かく消化に優しい調理で、これらを日々の献立に少しずつ重ねていくことが、妊娠に向けた身体づくりを支えます。
避けた方が良い食品・飲み物

カフェインの摂りすぎは控えたいところで、コーヒーは1日1〜2杯程度を目安にし、過剰摂取は避けましょう。冷たい飲み物やアイス、生野菜の摂りすぎは、東洋医学でいう「身体を冷やすもの」にあたり、子宮や卵巣の血流を妨げる一因となります。常温〜温かい飲み物を選ぶのがおすすめです。
白砂糖を多く含むお菓子やジュースなどの過度な糖質は血糖の乱高下を招きやすく、スナック菓子や一部の加工食品に含まれるトランス脂肪酸は控えめにしたい栄養素です。また、夏野菜(きゅうり・トマトなど)や南国の果物、白砂糖、過度なアルコールも身体を冷やす傾向があるため、冷え症の方は量と食べ方を工夫しましょう。
日常生活での対策

妊活の土台づくりには、漢方や食事に加えて生活習慣の見直しが欠かせません。まず温活として、腹巻きや靴下で下半身を冷やさず、シャワーで済ませず湯船にゆっくり浸かって身体を芯から温めましょう。
ホルモンの分泌は睡眠と深く関わるため、毎日できるだけ同じ時間に就寝し、6〜7時間以上の質のよい睡眠を確保することが大切です。ウォーキングやストレッチなどの適度な運動は血流を促し、ストレス解消にも役立ちます。
妊活はストレスを抱えやすいものですから、深呼吸や趣味の時間を意識的に取り、心の余白を保つことも妊娠力を支えます。さらにセルフケアとして、内くるぶしから指4本上にある三陰交〈さんいんこう〉や、おへその下にある関元〈かんげん〉のツボを、温めたり優しく押したりするのもおすすめです。冷えや月経トラブルの緩和に役立つとされ、毎日の習慣に取り入れやすいケアです。
薬膳素材のご購入について
本コラムでご紹介したなつめやクコの実などの薬膳素材は、運龍堂オンラインショップで安心してお求めいただけます。毎日の食卓に無理なく取り入れられる食品扱いの素材を取り揃えておりますので、ぜひご覧ください。
運龍堂オンラインショップ 商品一覧はこちら
まとめ

妊活における漢方は、自分の体質(証)に合った処方を、食前・食間など適切なタイミングで継続して飲むことで、その効果を最大限に発揮します。気虚・血虚・腎虚・瘀血といった体質の偏りを「未病」の段階から整え、薬膳素材やバランスのよい食事、温活や睡眠、ツボのセルフケアを組み合わせることが、妊娠しやすい身体づくりの近道です。
一方で、妊娠中に慎重を要する生薬もあるため、自己判断ではなく専門家と相談しながら進めることが安心につながります。運龍堂では、お一人おひとりの体質やお悩みをじっくり伺い、最適な漢方をご提案しております。ご来店が難しい方に向けてオンライン診療にも対応しておりますので、妊活の漢方についてお悩みの際は、どうぞお気軽にご相談ください。