妊活を応援する漢方の智慧「周期療法」〜体のリズムを整え、赤ちゃんを迎える準備を〜
はじめに
妊娠を希望する方々の中で、近年ますます注目を集めている「漢方周期療法」。これは、女性の月経周期に合わせて漢方薬を調整し、体のリズムとホルモンバランスを整え、妊娠しやすい体質を育てる自然なアプローチです。西洋医学の治療と並行して行われることも多く、不妊治療中のサポートとしても高く評価されています。
周期療法とは?
周期療法とは、女性の月経周期を「生理期(排出期)」「卵胞期(低温期・栄養補給期)」「排卵期(転換期)」「黄体期(高温期・着床準備期)」の4つに分け、それぞれの時期に合った漢方薬や生薬を使い分ける方法です。
漢方では「気・血・水」「陰陽」「五臓六腑」のバランスを整えることが重要視され、周期療法では特に「腎・肝・脾」を中心に女性ホルモンの働きに着目したアプローチが行われます。
さらに、年齢や体質に応じて補腎(腎を補う)を加えるなどの柔軟な応用ができるのも特徴です。
妊活に重要な生薬
漢方医学では、女性の体調を整える代表的な生薬として以下のものがあります。
1.当帰(とうき)
- セリ科の植物の根
- 「補血」作用があり、血を補い、陽気をめぐらせる
- 冷えの解消、生理不順、生理痛、子宮内膜症の改善に効果的
- 「当(まさ)に帰る」という意味で、女性特有の病気を持つ人が服用して元気を取り戻し、「離れていった夫が帰ってきた」という言い伝えがある
2. 川芎(せんきゅう)
- セリ科の植物の根茎
- 「活血」作用があり、血流を改善し、気をめぐらせる
- 生理不順、生理痛、腹痛、冷え症の改善に効果的
3. 鹿茸(ろくじょう)
- 性ホルモンのバランスを整える
- 更年期障害への対応に効果的
4. 馴鹿(じゅんろく、トナカイ角)
- 黄体ホルモンのバランスを整える
- 高温期への対応に効果的
年齢と周期療法
- 27歳まで:周期療法中心(養血・活血)
- 28歳〜閉経前:周期療法+補腎(鹿茸・馴鹿など)
- 閉経後:補腎療法を中心に体調管理
「女性は7の倍数の年齢で体に変化が現れる」といわれ、初潮、妊娠、閉経などの節目に合わせて対応することで、漢方の効果がより高まります。
女性の体と「七の倍数」の法則
漢方医学では、女性の体は「7の倍数」で変化すると考えられています。
- 7歳:「精」を育てていく時期
- 14歳:「精」が充実し、ピークとなる時期(初潮)
- 21歳:体がピークとなり、子どもを産める体になる時期
初潮の時期が早すぎる(13歳未満)場合や遅すぎる(15歳以上)場合は、体の発達バランスが崩れ、30歳前後で生理不順になることがあるとされています。
各周期に応じた漢方の考え方と代表的な処方
生理期:排出の時期
- 目的:瘀血をしっかりと排出し、子宮内をきれいに整える
-
使用処方(一般処方):桂枝茯苓丸、桃核承気湯、通導散、芎帰調血飲第一加減など
- 使用生薬:川芎、当帰、丹参など(活血・行気)
この時期は「血」の滞り=瘀血をしっかりと流すことが重要です。経血の色が黒い、塊がある、月経痛が強いといった症状があれば、瘀血体質の可能性が高く、活血化瘀の漢方が有効です。
卵胞期:低温期・栄養補給の時期
- 目的:子宮内膜の再生、卵胞の成熟を促進
- 使用処方(一般処方):四物湯、当帰芍薬散、六味地黄丸、人参養栄湯など
- 使用生薬:当帰、芍薬、茯苓、白朮、熟地黄、山茱萸など(補血・補腎)
この時期には「血」を補い、体の陰を養う補血薬や補腎薬が使われます。冷え性や貧血傾向の方は特に念入りに調整が必要です。
排卵期:転換の時期
- 目的:スムーズな排卵を促進し、卵管や子宮の通りを整える
- 使用処方(一般処方):逍遥散、柴胡疎肝湯、芎帰調血飲第一加減など
- 使用生薬:柴胡、香附子、川芎、牡丹皮、麝香など(理気・疏肝)
ストレスや自律神経の乱れは排卵の障害になります。ストレスが多い人、排卵痛がある人にはこの時期に理気・疏肝作用のある処方を重点的に用います。
黄体期:高温期・着床準備の時期
- 目的:受精卵の着床と妊娠の維持
- 使用処方(一般処方):十全大補湯、参馬補腎丸など
- 使用生薬:鹿茸、人参、黄耆、杜仲、馴鹿(トナカイ角)など(補腎・補陽)
黄体ホルモンが安定しないと、高温期が短くなり妊娠が難しくなります。冷えや疲労の強い人は補腎陽の生薬を積極的に活用しましょう。
年齢と周期療法
- 27歳まで:周期療法中心(養血・活血)
- 28歳〜閉経前:周期療法+補腎(鹿茸・馴鹿など)
- 閉経後:補腎療法を中心に体調管理
「女性は7の倍数の年齢で体に変化が現れる」といわれ、初潮、妊娠、閉経などの節目に合わせて対応することで、漢方の効果がより高まります。
周期療法の実際の処方例
例1:基本的な周期療法
- 生理期:和漢薬
- 低温期:鹿茸製剤
- 排卵期:和漢薬
- 高温期:馴鹿製剤 または 亀鹿霊仙廣 または 当帰芍薬散
例2:冷えが強く、35歳未満の女性の場合
- 生理期:馴鹿製剤(1回服用)
- 低温期:馴鹿製剤(1回服用)
- 排卵期:馴鹿製剤(2回服用)
- 高温期:馴鹿製剤(2回服用)
例3:ストレスによる高温期の乱れがある場合
特に仕事をしていてストレスを抱えている方に多いパターンです。ストレスにより脳下垂体から分泌されるFSH(卵胞刺激ホルモン)やLH(黄体形成ホルモン)の分泌が不安定になり、周期が乱れます。
このような場合は、四逆散(しぎゃくさん)、芎帰調血飲第一加減(きゅうきちょうけついんだいいちかげん)などに麝香製剤を加えることが効果的です。
周期療法でよくある質問
Q:周期療法は誰でもできますか?
A:はい。基礎体温が測れる方であれば、ほぼどなたでも適応可能です。
Q:ホルモン治療と併用できますか?
A:可能です。特に体質改善や副作用軽減の目的で併用するケースが多いです。
Q:いつまで続ける必要がありますか?
A:目安は3〜6ヶ月ですが、体質により調整が必要です。
まとめ
漢方の「周期療法」は、妊娠を希望する女性の体を自然なリズムで整え、妊娠力を高める優れた方法です。冷えやストレスなど現代女性に多い体質トラブルにも対応でき、体調全体を整えることができます。
妊活中の方、ホルモン治療に不安を感じている方、自然な妊娠を目指す方には特におすすめです。あなたの周期に合わせた最適な処方を、ぜひ漢方専門薬局でご相談ください。