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妊娠中のむくみ対策の漢方薬
はじめに
妊娠中は、足が重だるい、靴がきつい、夕方になると足首が腫れぼったいといった「むくみ」を感じることが少なくありません。妊娠によって体内の水分量が増えたり、大きくなった子宮の影響で下半身の血流が滞りやすくなったりするためです。
多くは妊娠中によくみられる変化のひとつですが、急にむくみが強くなった場合や、頭痛・めまい・目のちらつきなどを伴う場合は注意が必要です。妊娠高血圧症候群など、早めの確認が必要なこともあるため、気になる変化があるときは我慢せず産婦人科へ相談しましょう。
妊娠中にむくみやすくなる理由

妊娠中は赤ちゃんを育てるために血液量や体液量が増え、水分をためこみやすい状態になります。また、子宮が大きくなることで骨盤まわりの血管が圧迫され、足から心臓へ戻る血流が滞りやすくなります。立ちっぱなしや座りっぱなしが続いた日、暑い日、塩分の多い食事が続いた日などは、むくみが出やすくなることがあります。
こんな症状があるときは早めに相談を

- 足のむくみだけでなく、頭痛、めまい、目が見えにくい・ちらつくといった症状がある
- 顔や手まで急にむくみが目立ってきた
- 短期間で体重が急に増えた
- これまで経験したことがないような強い頭痛がある
- ろれつが回りにくい、手足が動かしにくい、いつもと違う強い胃の痛みや吐き気がある
- 家庭血圧が高く、とくに160/110mmHgを超えている
こうした症状がある場合は、自己判断で様子を見続けず、できるだけ早く産婦人科に連絡しましょう。
漢方ではどう考える?

漢方では、妊娠中のむくみを「水分代謝の乱れ」や「体を支える力の低下」といった視点からみることがあります。冷えや疲れやすさ、食欲、便通、汗のかき方などを総合して、その人の体質や状態に合う方法を考えていくのが特徴です。
ただし、妊娠中は使える漢方薬や生薬に注意が必要です。体にやさしそうに見えるものでも、自己判断で使うのではなく、主治医や漢方に詳しい医療者・薬剤師に相談して選ぶことが大切です。
妊娠中のむくみに対応する漢方薬
妊娠中のむくみ対策では、体質や症状に応じて当帰芍薬散や五苓散などが検討されることがあります。一方で、霊鹿参、活命参は、いずれも滋養強壮を目的とした関連製品であり、妊娠中のむくみそのものに対する標準的な治療薬として添付文書に記載されているわけではありません。その点が誤解なく伝わるよう、表現を整えています。
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)

妊娠中のむくみによく使われる漢方薬で、まず検討されることが多い処方です。体の「血」の不足や、「水分バランス」の乱れを整える働きがあります。当帰(とうき)、芍薬(しゃくやく)、川芎(せんきゅう)は血の巡りを助け、茯苓(ぶくりょう)、蒼朮(そうじゅつ)、沢瀉(たくしゃ)は余分な水分を外に出しやすくします。特に、疲れやすい・体が冷えやすい・むくみがあるという人に向いています。比較的安全性が高く、妊娠初期から使われることもあります。
五苓散(ごれいさん)

五苓散は、体の余分な水分を外に出す力が強い漢方薬です。茯苓(ぶくりょう)、猪苓(ちょれい)、沢瀉(たくしゃ)が尿を出しやすくし、白朮(びゃくじゅつ)が胃腸の働きを助けます。また、桂皮(けいひ)は体を温めて、水分の巡りをよくします。足のむくみが強い・尿の量が少ないというタイプの人に向いています。妊娠中にも使われることが多く、産科で処方されることもあります。
霊鹿参(れいろくさん)
霊鹿参は、鹿茸と紅参を主成分とする滋養強壮剤です。虚弱体質、肉体疲労、病中病後、胃腸虚弱、食欲不振、血色不良、冷え症などに用いられます。冷えや疲れやすさが気になる方に関連づけて紹介されることはありますが、妊娠中のむくみを直接の適応として示した製品ではありません。妊娠中に使うかどうかは、必ず主治医や薬剤師に確認しましょう。
活命参(かつめいさん)
活命参は、紅参、鹿茸、菟絲子、枸杞子を配合した滋養強壮剤です。虚弱体質、肉体疲労、病中病後、胃腸虚弱、食欲不振、血色不良、冷え症などに用いられます。体力低下や冷えを伴う方に関連づけて紹介されることはありますが、妊娠中のむくみ専用の治療薬ではないため、自己判断で使用せず、妊娠中の服用可否を医療者に確認することが大切です。
毎日の食事で意識したいこと

- 塩分の多い外食や加工食品が続くときは、汁物を飲み干さない、味の濃いおかずを重ねないなど、できる範囲で調整する
- むくみが気になるからといって極端に水分を控えず、のどの渇きに合わせてこまめに補う
- 卵、豆腐、魚、肉、乳製品などでたんぱく質を無理なくとる
- 野菜、海藻、果物なども取り入れて、食事の偏りを減らす
取り入れやすい薬膳素材

妊娠中の一般向け記事では、特別な生薬を多く並べるよりも、日常の食事に取り入れやすい食材を無理なく続けるほうが実践的です。
- 黒豆:煮豆やスープにしやすく、普段の食卓に取り入れやすい食材です。
- 山いも:やわらかく食べやすく、食欲が落ちやすいときにも比較的取り入れやすい食材です。
- しょうが:冷えが気になるときに、少量を料理に使うと取り入れやすい素材です。
- 小豆:甘味を強くしすぎず、日々の食事の一部として使うと続けやすいでしょう。
どの食材も「食べれば必ずむくみが改善する」というものではありません。食べやすさと体調を優先しながら、続けやすい形で取り入れることが大切です。
今日からできるセルフケア

- 長時間同じ姿勢を続けない。1時間に1回は足首を回す、少し歩くなどして血流を促す
- 休憩時や就寝前に脚を少し高くして休む
- 主治医から問題ないと言われていれば、散歩などの軽い運動を無理なく続ける
- 締めつけが強すぎない靴下や衣類を選ぶ
- 症状が気になるときは、我慢せず健診時や外来で相談する
まとめ

妊娠中のむくみはよくある悩みのひとつですが、急に悪化したり、頭痛や見えにくさなどを伴ったりする場合は注意が必要です。毎日のケアとしては、塩分のとりすぎに気をつけること、同じ姿勢を続けないこと、脚を休めることが基本になります。
漢方や関連製品を取り入れる場合も、「自然のものだから大丈夫」と考えず、妊娠中は必ず主治医や薬剤師に相談して、安全性を確認しながら進めましょう。