妊娠中のイライラを漢方で解決!健やかなマタニティライフを送るための漢方的アプローチ

「妊娠してから、自分でも驚くほど些細なことでイライラしてしまう」 「パートナーや家族に強く当たってしまい、後で自己嫌悪に陥る」 「以前は気にならなかったことに過敏になり、心が休まらない」


妊娠というおめでたい時期でありながら、こうした「感情のコントロール」に悩む妊婦さんは非常に多くいらっしゃいます 。 妊娠中のイライラは、決してあなたの性格のせいではありません。お腹の中で新しい命を育むという、人生における劇的な変化に対して、心と体が一生懸命に応答している証拠でもあります 。

今回は、妊娠期間中に起こりやすいイライラの原因を紐解き、漢方の視点から、安心して服用できる漢方薬や食事、日常生活での注意点について詳しく解説していきます 。


1. なぜ妊娠中にイライラしやすくなるのか?

西洋医学的な視点:ホルモンの激変

西洋医学的には、妊娠中の情緒不安定の大きな要因は「ホルモンバランスの激変」です 。 妊娠を維持するために分泌される「プロゲステロン(黄体ホルモン)」などが急増することで、自律神経が乱れやすくなります 。 また、つわりによる体調不良、睡眠不足、出産や育児への不安といったストレスが重なることで、脳内の感情を制御するバランスが崩れやすくなるのです 。

東洋医学的な視点:精神を支える「血(けつ)」の不足

漢方では、妊娠中のイライラを「血(けつ)」と「肝(かん)」、そして「気(き)」のバランスから考えます 。

ここでいう「血」は、単に血管の中を流れる赤い液体(血液)だけを指すのではありません 。漢方における「血」には、「心に栄養を与え、精神を安定させる物質」という非常に重要な役割があります 。


  • 「血」は精神のガソリン: 妊娠すると、お母さんの「血」は優先的にお腹の赤ちゃんへと送られます 。すると、お母さんの心に行き渡るはずの「精神の栄養」が一時的に不足した状態(血虚:けっきょ)になります 。

  • 「肝」のコントロール不能: 自律神経や情緒を司る「肝」という臓器は、この「血」をエネルギー源として動いています 。エネルギー源が足りなくなると、「肝」はオーバーヒートを起こし、感情のブレーキが利かなくなります 。これが、イライラや怒りっぽさの正体です 。

  • 生命力の根源「精(せい)」の消耗: 妊娠中はお母さんの生命エネルギーの貯蔵庫である「腎(じん)」に蓄えられた「精」も赤ちゃんへ分け与えられます。この根源的なエネルギーが減ることで、心に「しなやかな余裕」がなくなってしまうのです 。


2. 妊娠の時期別にみるイライラの特徴と背景

妊娠期間は長く、時期によって心身の状態は変化します 。

妊娠初期(〜13週):ホルモンと環境の変化

つわりによる体調不良が重なり、精神的にも最も不安定になりやすい時期です。ホルモンバランスが急激に変化する中で、不安がイライラとして現れやすくなります。

妊娠中期(14週〜27週):安定期と「血」の需要増

「安定期」と呼ばれ体調は落ち着きますが、赤ちゃんの成長が加速し、母体の「血(精神の栄養)」の需要が最も高まる時期です。この時期に無理をすると、心に栄養が回らず、急に感情が爆発したりすることがあります。

妊娠後期(28週〜):身体的負荷と出産への不安

お腹が重くなり、睡眠不足や物理的な苦しさが「気(エネルギー)」を消耗させます。出産に対する未知の不安と相まって、些細なことに過敏になりやすくなります。

3. 妊娠中のイライラ対策に用いられる主な漢方薬

漢方では、その人の体質や症状のパターン(漢方ではこれを「証(しょう)」と呼びます)に合わせて、最適な処方を選びます 。

① 抑肝散(よくかんさん)

  • 【特徴】 イライラ対策の代表格です 。

  • 【主な構成生薬】 柴胡、釣藤鈎、当帰、川芎、白朮、茯苓、甘草

  • 【こんな方に】 神経が昂ぶって怒りっぽい、夜眠れない、無意識に歯を食いしばってしまう方に 。筋肉の緊張を緩め、高ぶった神経を穏やかに鎮めてくれます 。

② 活命参(かつめいさん)

【特徴】 疲れと、根本的なエネルギー不足が原因のイライラに 。

【主な構成生薬】 鹿茸(ろくじょう)、紅参(こうじん)

【こんな方に】 疲れがひどい、やる気が出ない、体が重だるいと感じる方に 。

【解説】 主薬である鹿茸(ろくじょう)は、雄鹿の幼角を乾燥させたもので、古来より「命の門を補う」と言われる貴重な生薬です。生命力の源である「精」を補い、発育や成長を助ける力が非常に強いため、赤ちゃんに栄養を分けるお母さんの土台(腎)を力強く支えます。これに紅参(こうじん)が加わることで、「気・血・精」をトータルで補い、心に深い安心感と余裕を取り戻します 。

③ 抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)

【特徴】 つわり気味で胃腸が弱い方のイライラに 。

【主な構成生薬】 柴胡、釣藤鈎、当帰、川芎、白朮、茯苓、甘草、陳皮、半夏

【こんな方に】 吐き気がある、みぞおちが苦しい、胃腸が弱くて通常の漢方が飲みにくい方に 。胃の不快感を解消しながら、イライラを抑えます 。

④ 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)

【特徴】 貧血気味で冷えがある方のバランス調整に 。

【主な構成生薬】 当帰、芍薬、川芎、白朮、茯苓、沢瀉

【こんな方に】 冷え症、むくみやすい、顔色が悪い方に 。「血」を補い、巡りを良くすることで、間接的に心を安定させます 。赤ちゃんの成長を助ける「安胎薬」としても有名です。

⑤ 甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)

【特徴】 感情が爆発しやすく、泣き出してしまう方に 。

【主な構成生薬】 小麦、大棗、甘草

【こんな方に】 急に悲しくなる、不安でパニックになりやすい方に 。食べ物に近い成分で構成されており、即効性があるのが特徴です 。

4. 【重要】妊娠中に服用を避けるべき漢方薬

漢方薬の中には、赤ちゃんや子宮に影響を与える可能性があるものがあります 。自己判断で服用せず、必ず専門家に相談してください 。

妊娠中に注意が必要な成分・処方


* 大黄(だいおう)・芒硝(ぼうしょう): 強い下剤成分です 。腸を刺激しすぎて子宮収縮を誘発し、流産・早産のリスクを高める可能性があります 。便秘がちな方は特に注意が必要です 。

* 桃仁(とうにん)・紅花(こうか)・牡丹皮(ぼたんぴ): 滞った血を強力に流す成分です 。妊娠中は「血」を留めておく必要があるため、これらを多く含む処方(桂枝茯苓丸など)は慎重な判断が必要です 。

* 加味逍遙散(かみしょうようさん): 更年期やPMSに有名ですが、牡丹皮が含まれています 。妊娠中の体質によっては不向きな場合があるため、運龍堂ではより安全な処方をご提案しています 。


5. 妊娠中のイライラを鎮める「薬膳」と「食事」

「薬食同源」の考えに基づき、日々の食事で心をケアしましょう 。

積極的に摂りたいお勧めの食品


  • 【気の巡りを良くする】香りの野菜

  • 紫蘇(しそ): 気の流れをスムーズにし、つわりを和らげます 。

  • セロリ・春菊: 独特の香りが、高ぶった「肝」の熱を逃がします 。

  • 【心に栄養を与える】血を補う食品

  • なつめ: 「天然の精神安定剤」とも呼ばれます 。1日3〜5粒を目安におやつやスープで摂りましょう。

  • クコの実・黒ごま: 疲れを取り、妊娠中に必要な「腎」の力と「血」を補います 。

  • 【怒りの火を消す】熱を冷ます食品

  • トマト・きゅうり: 体にこもった余分な熱を取り除きます 。

  • あさり・しじみ: 肝機能をサポートし、イライラを鎮めます 。

避けた方が良い食品


  • 激辛料理(唐辛子など): 体に熱を溜め込み、「肝」の火を煽って怒りっぽさを増幅させます 。

  • カフェインの摂りすぎ: 神経を刺激し、焦燥感や不眠を招きます 。1日200mg以下(コーヒー1〜2杯程度)を目安にしましょう。

  • 極端に冷たいもの: 胃腸を冷やすとエネルギー(気)が作れなくなり、結果的に「血」不足を招きます 。

  • 高カロリー・高脂質な食事: 体に老廃物(湿熱)を溜め込み、イライラや妊娠高血圧症候群などのリスクを高めます。


6. 運龍堂からのアドバイス:心を軽くする養生法

① 「目は肝の窓」と心得て、スマホを休む

漢方では、「目と肝はつながっている(漢方では『肝は目に開く(開竅(かいきょう)する)』と言い、目は肝の窓口のような役割をしています)」と考えられています 。 目を酷使すると「肝」のエネルギーや「血(精神の栄養)」を激しく消耗します 。スマホの見すぎはイライラに直結するため、意識的に目を休める時間を作りましょう 。


② 深呼吸で「気を下ろす」

イラッとした瞬間、東洋医学では「気が頭に上がっている」状態になります 。 鼻から吸って、口からゆっくり「吐き切る」呼吸を3回繰り返してください 。吐く息と一緒に、イライラという「熱」を体の外へ出すイメージを持つと効果的です 。


③ 「イライラは頑張っている証拠」と自分を許す

「お母さんなんだから優しくしなきゃ」という思い込みが、自分を追い詰めます 。イライラしてしまったら、「今は赤ちゃんに100%栄養を送っているから、私の心が少し空っぽなだけなんだな」と、一生懸命な自分を認めてあげてください 。


お母さんの笑顔が、赤ちゃんの栄養です


妊娠期間中のイライラは、決してあなたのわがままではありません 。 体が赤ちゃんを守るために、全エネルギーを注いでいる結果として起こる、尊い反応の一つです 。


もし、そのイライラが辛くて日常が苦しくなっているのなら、ぜひ一度漢方の力を借りてみてください 。 不足している「血(精神の栄養)」を補い、活命参のように鹿茸(ろくじょう)の力で「精(生命力)」の土台を立て直すことで、心は驚くほど軽くなります 。

お母さんが心穏やかに過ごすことは、お腹の赤ちゃんにとって何よりのプレゼントです 。 杜の都の漢方薬局 運龍堂では、一人ひとりの妊婦さんの体質やお悩みに寄り添い、最適な解決策をご提案いたします 。


些細なことでも構いません。どうぞお気軽にご相談ください 。 あなたのマタニティライフが、少しでも明るく、温かいものになりますよう、心より応援しております 。