経血量が多い・月経が8日以上続く方へ|「過多月経」を体質から整える漢方と養生

はじめに

「ナプキンが1時間ももたない」「レバーのような塊がいくつも出る」「月経が8日以上ダラダラと続く」。こうしたお悩みは「過多月経(かたげっけい)」と呼ばれ、月経のある女性のおよそ2割が経験するといわれています。1回の月経で失われる血液量は一般的に20〜140mL程度とされますが、これを大きく超える状態が毎月くり返されると、鉄が少しずつ目減りして貧血につながりやすくなります。妊活中の方にとっては、体力や子宮内膜の状態にも関わってくる、見過ごせないサインです。

また、過多月経の背景には子宮の病気が隠れていることもあるため、まずは婦人科で原因を確かめることがとても大切です。そのうえで漢方では、出血が増える理由を「体を支えるエネルギーの不足」「体にこもった余分な熱」「血のめぐりの滞り」といった体質から捉えていきます。この記事では、過多月経とどう向き合っていけばよいのかを、運龍堂の視点から解説します。

過多月経の全体像

経血量が多くなり、月経が長引きやすい理由

● 西洋医学的な観点から

月経は、妊娠に備えて厚くなった子宮内膜がはがれ落ちる現象です。卵胞期にはエストロゲン(卵胞ホルモン)が子宮内膜を増殖させ、排卵後はプロゲステロン(黄体ホルモン)が内膜を妊娠しやすい状態に整えます。妊娠が成立しなければ両方のホルモンが急激に減り、内膜がはがれて出血が起こります。このとき血管を収縮させて出血を止める仕組みや、血液を固める仕組みがきちんと働くことで、月経は通常3〜7日ほどでおさまるとされています。逆にいえば、内膜が厚くなりすぎたり、子宮の収縮や止血の働きがうまくいかなかったりすると、経血量が増え、期間も延びやすくなります。

月経周期とホルモンの働き

経血量が増える原因として代表的なのが、子宮筋腫や子宮腺筋症です。筋腫が子宮の内側にできると内膜の面積が広がり、子宮がうまく収縮できずに出血が長引きやすくなります。ほかにも、子宮内膜ポリープ、排卵がうまく起こらないことによるホルモンバランスの乱れ、甲状腺の働きの低下、血液を固める働きの生まれつきの異常(凝固異常)などが関わることがあります。

見落とされやすいのが、鉄欠乏性貧血です。一般的にヘモグロビン値が12g/dL未満で貧血と判断されますが、その手前でも、貯蔵鉄の指標であるフェリチンが12〜25ng/mLを下回っていると、体の中の鉄の蓄えはすでに乏しくなっていると考えられています。「ヘモグロビンは正常なのに、だるさや動悸、抜け毛が続く」という場合は、フェリチンまで測っていただくと状態がつかみやすくなります。

経血量が増える原因

● 東洋医学(漢方)の観点から

漢方では、血は「気(き)」の力によって血管の中に留められていると考えます。この気が不足した状態を気虚(ききょ)といい、血を引き留める力が弱まることで、経血がだらだらと出続けたり、量が増えたりしやすくなるとされています。疲れやすい、食が細い、声に力が出ない、少し動くと息が切れる、といった方はこのタイプに当てはまりやすい傾向があります。

一方で、体に余分な熱がこもると、血が勢いよくあふれ出やすくなると考えられています。のぼせやほてり、イライラ、口の渇き、肌の乾燥をともない、経血の色が鮮やかな赤で量が多い、というのが特徴です。また、血のめぐりが滞った状態である瘀血(おけつ)があると、古い血が子宮内にとどまって塊となり、押し出すときに強い痛みが出たり、出血が長引いたりすることがあります。

そして、多量の出血が続けば、体をうるおし養う血そのものが消耗します。これが血虚(けっきょ)で、めまい、立ちくらみ、顔色の白さ、爪のもろさ、眠りの浅さとして表れます。過多月経の多くは、この「気の不足」「余分な熱」「めぐりの滞り」「血の消耗」がいくつも重なって起きていると考えられており、どこから整えるかを見極めることが漢方の出発点になります。

気虚血虚瘀血血熱

主な症状

ご自身の月経量は他の方と比べにくいものですが、次のような場合は過多月経が疑われます。昼間でも1〜2時間ごとにナプキンを替える必要がある、夜用ナプキンを重ねても漏れてしまう、月経が8日以上続く、直径2〜3cm以上(500円玉大以上)の塊がいくつも出る、といったサインです。

これに加えて、鉄が不足してくると、立ちくらみ、動悸や息切れ、慢性的な疲労感、頭痛、顔色の悪さ、爪が反り返る、氷を無性に食べたくなる、といった症状が重なってきます。妊活中の方では、月経後もなかなか体調が戻らない、基礎体温が安定しないといった形で表れることもあります。

ここで改めてお伝えしたいのが、過多月経の背景には子宮筋腫・子宮腺筋症・子宮内膜ポリープ・血液を固める働きの異常などが隠れていることがある、という点です。漢方で体質を整えるのはとても大切なことですが、その前に、まず婦人科で超音波検査や血液検査を受け、原因を確かめることを強くおすすめします。原因がはっきりしたうえで漢方を組み合わせるほうが、遠回りにならずにすみます。

過多月経に伴う主な症状

服用可能な漢方薬・薬膳素材

漢方では、同じ「経血量が多い」というお悩みでも、その方の体質によって選ぶものが変わります。ここでは、運龍堂で過多月経のご相談にあたって用いることの多い5つの処方をご紹介します。いずれも自己判断ではなく、体質を確認したうえでお選びいただくことが大切です。

● ① 帰脾湯(きひとう)

人参(にんじん)、黄耆(おうぎ)、白朮(びゃくじゅつ)、竜眼肉(りゅうがんにく)、酸棗仁(さんそうにん)、当帰(とうき)などから成る処方です。消化吸収を担う働きを立て直しながら気を補い、血を引き留める力を高めることを目的としています。気虚(ききょ)、つまり体を支えるエネルギーが不足して出血を留めておけないタイプに向くとされ、疲れやすい、日中も横になりたくなる、眠りが浅く夢を多く見る、不安感が強い、といった方に用いられます。出血によって消耗した状態を補いながら、心身の落ち着きも支えることが期待される処方です。

帰脾湯

● ② 温清飲(うんせいいん)

当帰(とうき)、芍薬(しゃくやく)、川芎(せんきゅう)、地黄(じおう)に、黄連(おうれん)、黄芩(おうごん)、黄柏(おうばく)、山梔子(さんしし)を組み合わせた処方です。不足した血を補いながら、同時に体にこもった余分な熱をさます組み立てになっています。のぼせ、ほてり、イライラ、皮膚の乾燥やかゆみをともない、経血の色が鮮やかで量が多いタイプに向くとされています。「疲れているのに頭だけ熱っぽい」「化粧のりが悪いほど肌が乾く」という方に検討されることの多い処方です。

● ③ 四物湯(しもつとう)

当帰(とうき)、芍薬(しゃくやく)、川芎(せんきゅう)、地黄(じおう)の4味からなる、補血(ほけつ)の代表的な処方です。出血によって血が消耗した血虚(けっきょ)の状態に用いられ、顔色がすぐれない、立ちくらみがする、髪や爪がぱさつく、皮膚が乾燥する、といった方に向くとされています。妊活中の方にとって、子宮内膜を養う土台となる血を整えることは大切な準備のひとつであり、月経後の回復期に用いられることもあります。胃腸が弱い方では地黄がもたれることがあるため、体質に合わせた調整が必要です。

温清飲と四物湯

● ④ 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)

黄耆(おうぎ)、人参(にんじん)、白朮(びゃくじゅつ)、当帰(とうき)、陳皮(ちんぴ)、升麻(しょうま)、柴胡(さいこ)などから成る処方です。消化吸収の力を高めて全身の気を底上げし、下に落ちようとするものを引き上げる働きがあるとされています。全身のだるさ、食欲の低下、話すのもおっくうなほどの疲労感、少し動いただけで出る汗をともない、月経がだらだらと続くタイプに向きます。夏バテのように体力が落ちている時期や、産後・病後の回復期にも用いられる処方です。

● ⑤ 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)

桂皮(けいひ)、茯苓(ぶくりょう)、牡丹皮(ぼたんぴ)、桃仁(とうにん)、芍薬(しゃくやく)から成る、活血(かっけつ)を目的とした処方です。瘀血(おけつ)によって血のめぐりが滞り、レバー状の塊が出る、下腹部が張って痛む、痛みが月経の初日から2日目に強い、肩こりやのぼせと足の冷えが同時にある、といったタイプに用いられます。滞っていたものが動くことで、経過の途中で出血の様子が変わることもあるため、必ず専門家の確認のもとでお使いください。妊娠の可能性がある時期の服用については、あらかじめご相談いただくことをおすすめします。

補中益気湯と桂枝茯苓丸

薬膳素材

毎日の食卓で少しずつ取り入れられる薬膳素材も、体を立て直す助けになります。

なつめ(棗)は、気を補い血を養う代表的な素材で、胃腸にやさしいのが持ち味です。1日2〜3粒をそのまま、またはお茶やスープに入れていただけます。龍眼肉(りゅうがんにく)は、消耗した血を補い、気持ちを落ち着ける働きがあるとされ、眠りが浅い方に向きます。枸杞の実(くこのみ)は、うるおいと血を補うとされ、ヨーグルトやサラダにひとつまみ加えるだけで手軽です。

蓮肉(れんにく)は、胃腸を整えながら気持ちを穏やかにするとされ、おかゆやスープに向いています。桑の実(くわのみ)は、血とうるおいを補うとされ、乾燥しやすい方や髪のパサつきが気になる方におすすめです。金針菜(きんしんさい)は鉄を含むことで知られ、水で戻して炒め物やスープにすると使いやすい素材です。みかんの皮(陳皮)は、気のめぐりを整えて胃腸の張りをやわらげるとされ、お茶に少量加えるだけで香りよく仕上がります。

なつめ・龍眼肉・枸杞の実を合わせて煮出すお茶は、月経後の回復期にとくに取り入れやすい形です。無理なく続けられる範囲で、ふだんの食事に少しずつ加えてみてください。

また運龍堂では、牡蠣肉エキス、スクアレン、亀板(きばん)もお取り扱いしています。いずれもお体の状態によって向き不向きがありますので、気になる方はお気軽にご相談ください。

薬膳素材

注意が必要な漢方薬

出血が多い時期には、血のめぐりを強く促す生薬の扱いに注意が必要です。大黄(だいおう)、芒硝(ぼうしょう)、紅花(こうか)、桃仁(とうにん)、牡丹皮(ぼたんぴ)、麝香(じゃこう)などは、滞りを動かす力が強い反面、出血が増えている最中に不用意に用いると、かえって量が増えてしまうことがあると考えられています。牡丹皮や桃仁を含む処方も、用いる時期や量の調整が欠かせません。

また、多くの漢方処方に含まれる甘草(かんぞう)は、複数の処方を重ねて飲むと摂りすぎになりやすく、むくみ、血圧の上昇、手足の脱力などが起こる偽アルドステロン症につながることがあります。麻黄(まおう)は動悸や不眠、胃の不快感を招くことがあり、附子(ぶし)は体質に合わないとほてりや動悸の原因になることがあります。

市販薬やサプリメントとの併用、婦人科で処方されているお薬との組み合わせについても、自己判断は避けてください。とくに鉄剤やホルモン剤を服用中の方は、その旨をお伝えいただいたうえで、漢方の内容を一緒に考えていくことが安心につながります。

おすすめの食品

過多月経の方にまず意識していただきたいのが、鉄とたんぱく質です。鉄には、肉や魚に含まれ吸収されやすいヘム鉄と、植物性食品に含まれる非ヘム鉄があります。赤身の牛肉、豚や鶏のレバー、かつお、まぐろ、あさり、しじみなどはヘム鉄が豊富で、月経後の回復期にとくにおすすめです。月経のある成人女性が1日に必要とする鉄はおよそ10.5mgとされていますので、毎食に少しずつ組み込む意識が役立ちます。

非ヘム鉄を含む小松菜、ほうれん草、大豆製品、切り干し大根なども取り入れたい食材ですが、こちらはビタミンCと一緒に摂ると吸収が高まるとされています。ブロッコリー、パプリカ、いちご、キウイなどを同じ食事に添えると効率的です。

そして、血をつくる材料となるたんぱく質も欠かせません。卵、魚、鶏肉、豆腐、納豆などを1食につき手のひら1枚分を目安にしてみてください。ビタミンB12や葉酸を含むしじみ、あさり、ブロッコリー、アボカドも、血をつくる働きを支えます。体を冷やさないよう、加熱してあたたかい状態でいただくのが基本です。黒ごま、黒豆、ひじきといった黒い色の食材も、漢方では体の土台を養うとされ、日常に取り入れやすい選択肢です。

避けた方が良い食品・飲み物

まず控えたいのが、体を冷やすものです。氷入りの冷たい水、アイスクリーム、生野菜ばかりのサラダ、南国産の果物を摂りすぎると、下腹部のめぐりが滞りやすくなると考えられています。常温以上のものを選び、白湯やほうじ茶などに切り替えるだけでも違ってきます。

一方で、体に熱がこもりやすい方は、唐辛子や山椒などの強い香辛料、揚げ物、脂の多い肉の摂りすぎにも注意が必要です。アルコールも血のめぐりを一時的に強め、月経中は出血量が増えやすくなるとされていますので、月経期は控えめにしてください。

また、緑茶・紅茶・コーヒーに含まれるタンニンは鉄の吸収を妨げるとされているため、食事の直前直後は避け、食後1時間ほど空けてから楽しむのがおすすめです。甘いお菓子や砂糖の多いジュースの摂りすぎも、胃腸の働きを鈍らせ、気をつくる力を弱めてしまうことがあります。

日常生活での対策

出血が多い方にとって、睡眠は最良の回復手段です。漢方では夜のあいだに血が養われると考えられており、できれば23時までに床につき、7時間前後の睡眠を確保したいところです。月経中は、激しい運動や長時間の入浴、重い荷物を持つ動作を控え、体を休ませることを優先してください。月経期以外は、ウォーキングやストレッチ、ヨガなど、じんわり汗ばむ程度の運動を週に3回ほど続けると、めぐりが整いやすくなります。

下腹部と腰、そして足首は、腹巻きやレッグウォーマーで温めましょう。とくに足首まわりの冷えは骨盤内のめぐりに影響しやすいとされています。ストレスは気のめぐりを乱し、気滞(きたい)を招いて月経の不調を強めることがありますので、深呼吸や短い散歩など、1日のなかで意識的に力を抜く時間を持ってください。

セルフケアには、内くるぶしの中心から指4本分上にある三陰交(さんいんこう)、膝の内側上方にある血海(けっかい)というツボが知られています。いずれも心地よい強さで、ゆっくり3〜5秒押して離すのを数回くり返します。あわせて、経血量・ナプキンの交換回数・塊の有無・日数を簡単に記録しておくと、婦人科でも漢方相談でも状態を的確にお伝えいただけます。

日常生活の養生

まとめ

経血量が多い、レバー状の塊が出る、月経が8日以上続く。こうした過多月経のサインは、体が「これ以上は消耗できません」と伝えている合図でもあります。背景には子宮筋腫や子宮腺筋症などが隠れていることがありますので、まずは婦人科で原因を確かめること。そのうえで、鉄欠乏性貧血の有無をヘモグロビン値だけでなくフェリチンまで含めて把握しておくと、その後の立て直しがスムーズになります。

漢方では、気虚(ききょ)で血を引き留められないタイプには帰脾湯や補中益気湯、体に余分な熱がこもるタイプには温清飲、血虚(けっきょ)を補うには四物湯、瘀血(おけつ)で塊が出るタイプには桂枝茯苓丸というように、その方の体質に合わせて組み立てていきます。ここに、なつめや枸杞の実といった薬膳素材と、温める・休む・記録するという日々の養生が加わることで、月ごとの変化が穏やかになっていくことが期待されます。

妊活を続けながらの体づくりは、焦らず順序立てて進めることが何よりの近道です。運龍堂では、お一人おひとりの月経の様子やお体の状態をうかがったうえで、無理なく続けられる漢方をご提案しています。ご来店が難しい方にはオンラインでの漢方相談も承っておりますので、遠方の方やお忙しい方も、どうぞお気軽にご相談ください。

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