- PCOS
- 妊活
- 漢方
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と漢方|排卵しにくい体質を内側から整える妊活サポート
はじめに
多嚢胞性卵巣症候群(たのうほうせいらんそうしょうこうぐん、PCOS)は、生殖年齢の女性のおよそ5〜10%にみられるといわれる、決してめずらしくない状態です。排卵がうまく起こりにくくなることが特徴で、排卵障害による不妊の原因のうち約70%を占めるとも報告されています。生理が来ない月がある、基礎体温が二層に分かれにくい、妊活を続けているのに手ごたえがない。そうしたお悩みの背景に、この体質が隠れていることは少なくありません。

婦人科では排卵を促すお薬やインスリン抵抗性への対応など、心強い治療が用意されています。一方で漢方は、排卵そのものを直接コントロールするというより、体の水分のめぐり、血のめぐり、気持ちのめぐり、そして生命力の土台を少しずつ底上げして、卵巣が働きやすい環境を内側から整えていくという考え方をします。この記事では、PCOSと漢方の関わりについて、杜の都の漢方薬局・運龍堂の視点から解説します。
多嚢胞性卵巣症候群が起こりやすい理由
●西洋医学的な観点から
PCOSでは、脳から卵巣へ指令を出すホルモンのバランスが崩れていることが知られています。具体的には、黄体形成ホルモン(LH)が卵胞刺激ホルモン(FSH)に比べて高くなり、LH/FSH比が1を超える、あるいは2以上になる方が多くみられます。この状態が続くと、卵胞は育ち始めるものの最後まで成熟しきれず、排卵に至らないまま卵巣の中に留まってしまいます。

また、男性ホルモン(アンドロゲン)が相対的に高くなりやすいことも特徴です。テストステロンやDHEA-Sの上昇は、にきびや体毛が濃くなるといった変化として表れることがあります。加えて、血糖を下げるインスリンが効きにくくなるインスリン抵抗性が背景にあると、体はインスリンをより多く分泌し、それが卵巣での男性ホルモン産生を後押しするという悪循環が生まれます。

卵巣に残った小さな卵胞が多いため、卵巣予備能の指標であるAMH(抗ミュラー管ホルモン)が同年代の平均より高く出ることもよくあります。診断の目安としては、月経周期が35日以上あく、あるいは年間の排卵が8回未満といった排卵の乱れ、超音波検査で片側の卵巣に2〜9mm程度の小卵胞が10個以上、卵巣の縁に沿って数珠(じゅず)のように並んで見える所見などが用いられます。
●東洋医学(漢方)の観点から
漢方では、PCOSのような排卵しにくい状態を、体の中の「めぐり」がいくつも滞った結果と捉えます。まず挙げられるのが水滞(すいたい)です。体に必要な水分がうまくさばけず、余分な湿り気として溜まってしまう状態を指します。むくみやすい、体が重だるい、痰(たん)が絡みやすいといったサインが出やすく、この余分な水分が卵巣のまわりに滞ると、卵胞が育ちにくくなると考えられています。
次に瘀血(おけつ)です。血のめぐりが滞り、古い血が留まっている状態をいいます。生理の血に塊が混じる、肩こりや頭痛がしつこい、顔色がくすむといった形で表れます。子宮や卵巣への血の巡りが不足すると、卵子が育つための栄養が届きにくくなります。
三つめが気滞(きたい)で、体を動かすエネルギーである「気」の流れが、ストレスや緊張で滞った状態です。イライラ、ため息、胸やお腹の張りなどが目印になります。ホルモンの指令を出す脳と卵巣のやりとりは、気持ちの状態に影響を受けやすいと考えられています。
そして腎虚(じんきょ)です。漢方でいう「腎」は、成長・発育・生殖をつかさどる生命力の貯金箱のような存在で、月経や妊娠の土台そのものです。ここが目減りすると、卵胞を育てて排卵させる力が出にくくなります。PCOSでは、これら四つが単独ではなく重なって現れることが多いのが特徴です。

主な症状
もっとも多いのは月経の乱れです。周期が35日以上にのびる、数か月来ない、逆に不正出血がだらだら続くといった形で表れます。基礎体温を測ると高温期がはっきりせず、一相性のままという方も多くみられます。
そのほか、にきびが顎まわりに繰り返しできる、体毛が濃くなる、髪が細くなる、体重が増えやすく減りにくい、首すじや脇の皮膚が黒ずむ、といった変化がみられることがあります。妊活の面では、排卵の時期が読みにくくタイミングが取りづらい、という悩みにつながりやすくなります。だるさや冷え、むくみ、気分の落ち込みを伴う方も少なくありません。

服用可能な漢方薬・薬膳素材
ここでは、運龍堂でお取り扱いしている漢方処方の中から、PCOSでお悩みの方にご相談の多いものをご紹介します。体質に合うかどうかが何より大切ですので、実際の服用にあたっては薬剤師にご相談ください。
●①桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
桂皮(けいひ)、茯苓(ぶくりょう)、牡丹皮(ぼたんぴ)、桃仁(とうにん)、芍薬(しゃくやく)の五つの生薬から成る、瘀血(おけつ)に用いられる代表的な処方です。滞った血のめぐりを助け、下腹部にこもった熱や張りをやわらげる方向にはたらくとされます。生理の血に塊が混じる、生理痛が重い、のぼせるのに足先は冷える、肩こりが強い、比較的体力があり顔色が赤みを帯びやすい、といったタイプの方に向くと考えられています。PCOSの中でも、卵巣まわりのめぐりの悪さが目立つ方に検討されることの多い処方です。
●②当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
当帰(とうき)、芍薬(しゃくやく)、川芎(せんきゅう)、茯苓(ぶくりょう)、白朮(びゃくじゅつ)、沢瀉(たくしゃ)で構成されます。血を養う生薬と、余分な水分をさばく生薬が組み合わさっているのが特徴で、血の不足と水滞(すいたい)の両方を抱えた方に用いられます。色白でやせ型または水太り傾向、疲れやすい、めまいや立ちくらみがある、足がむくむ、冷えが強い、生理の量が少なめといったタイプに向くとされます。婦人科領域で古くから使われてきた処方で、妊活中の方にもご相談の多いお薬です。

●③六君子湯(りっくんしとう)
人参(にんじん)、白朮(びゃくじゅつ)、茯苓(ぶくりょう)、半夏(はんげ)、陳皮(ちんぴ)、大棗(たいそう)、甘草(かんぞう)、生姜(しょうきょう)から成る処方です。胃腸のはたらきを支え、余分な水分や停滞したものをさばく方向にはたらくとされます。漢方では、食べたものを気血に変えるのは胃腸の仕事と考えます。ここが弱いと、いくら栄養をとっても卵巣まで届きません。食欲が出ない、食後に胃がもたれる、疲れやすい、下痢しやすい、体が重だるいという方の土台づくりとして検討されます。
●④柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
柴胡(さいこ)、半夏(はんげ)、茯苓(ぶくりょう)、桂皮(けいひ)、黄芩(おうごん)、大棗(たいそう)、人参(にんじん)、竜骨(りゅうこつ)、牡蠣(ぼれい)などで構成されます。気の流れの滞りをほぐしながら、高ぶった神経を落ち着ける方向にはたらくとされる処方です。妊活が長引くと、それ自体が大きなストレスになります。眠りが浅い、動悸がする、些細なことで動揺する、イライラして胸のあたりが詰まる感じがする、といった方に向くと考えられています。気滞(きたい)が目立つタイプの一助となる処方です。

●⑤芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)
芍薬(しゃくやく)と甘草(かんぞう)というたった二味の処方ですが、急に起こる筋肉のこわばりやけいれん性の痛みをやわらげる目的で、頓服(とんぷく)的に用いられます。生理痛でお腹がぎゅっとつかむように痛むとき、ふくらはぎがつるときなどに使われます。効き目が早いぶん、常用には向きません。甘草の量が多い処方ですので、必ず短期間・必要なときだけの使用にとどめ、薬剤師の指示に従ってください。

薬膳素材
毎日の食卓に少し加えるだけで、めぐりを助ける手がかりになる素材があります。ここでご紹介するのはいずれも食品として親しまれてきたもので、お茶やスープに気軽に取り入れられます。
はとむぎ(薏苡仁・よくいにん)は、体に溜まった余分な水分をさばく代表格として知られ、むくみや肌のごわつきが気になる方に親しまれてきました。煎じてはとむぎ茶として飲むほか、ご飯に混ぜて炊いてもおいしくいただけます。
玖瑰花(まいかいか)はハマナスのつぼみで、ほのかな甘い香りが特徴です。滞った気持ちと血のめぐりの両方に働きかけるとされ、生理前のもやもやする時期のお茶におすすめです。数輪を湯のみに入れてお湯を注ぐだけで、やさしい香りが立ちます。
菊花(きくか)は、頭に上がった熱をさましてくれるとされる花で、目の疲れやのぼせが気になるときに向きます。玖瑰花と合わせると、香りも見た目も華やかなブレンドになります。
みかんの皮(陳皮・ちんぴ)は、気のめぐりを助けて胃のつかえをほぐす素材です。お茶にしても、細かく刻んで炒め物や汁物の仕上げに振り入れても風味が引き立ちます。
蓮肉(れんにく)はハスの実で、胃腸をいたわりながら気持ちを落ち着けるとされます。お粥(かゆ)やスープに入れると、ほくほくとした食感が楽しめます。
金針菜(きんしんさい)はカンゾウの花のつぼみを乾燥させたもので、鉄分を含む食材として知られ、気持ちの晴れない時期に用いられてきました。水で戻してスープや和え物に。
なつめ(棗・なつめ)は、胃腸を助けながら血を養うとされる素材です。自然な甘みがあるので、お茶に一粒、煮込み料理に数粒入れると味に深みが出ます。
運龍堂では、こうした薬膳素材に加えて、スクアレンと牡蠣肉エキス(かきにくエキス)もお取り扱いしています。いずれも体の土台づくりを考える方からご相談の多い素材ですが、お一人おひとりの体質や現在の治療内容によって向き不向きがありますので、薬剤師の相談のうえでお取り扱いしております。気になる方は店頭やオンラインでお声がけください。

注意が必要な漢方薬
漢方薬は自然の生薬から作られていますが、体に働きかける以上、注意すべき点があります。まず気をつけたいのが甘草(かんぞう)です。多くの処方に含まれており、複数の漢方薬を併用すると知らないうちに摂りすぎてしまうことがあります。甘草を長期に多量に摂ると、血圧が上がる、むくむ、体のだるさや手足の力が入りにくくなるといった偽アルドステロン症が起こることがあります。とくに芍薬甘草湯は甘草の含有量が多いため、毎日の連用は避け、症状のあるときだけの頓服(とんぷく)にとどめてください。
次に、お通じを促す作用のある大黄(だいおう)やセンナを含むものです。腸を強く動かすため、妊娠の可能性がある時期には慎重な判断が必要とされています。また、麝香(じゃこう)を含む製剤も妊娠中は避けるべきものとされています。
血のめぐりを強く動かす牡丹皮(ぼたんぴ)、桃仁(とうにん)、紅花(こうか)などを含む処方も、妊娠が成立した可能性のある高温期後半には、そのまま続けてよいか確認が必要です。妊活中は、生理周期に合わせて服用内容を調整することが少なくありません。
このほか、麻黄(まおう)は動悸や不眠、血圧上昇につながることがあり、心臓や血圧に不安のある方は注意が必要です。附子(ぶし)も体を強く温める生薬で、量や体質によっては動悸やのぼせが出ることがあります。市販薬やサプリメントを併用している場合も含め、必ず薬剤師にお伝えください。
おすすめの食品
PCOSの体質づくりでは、血糖値の上がり方をゆるやかに保つ食べ方が土台になります。白米や白いパンより、玄米、雑穀米、全粒粉のパン、そばといった低GI(血糖値の上がりにくい)主食を選びましょう。食物繊維の多い野菜、きのこ、海藻、豆類を先に食べると、その後の糖の吸収がおだやかになります。
たんぱく質は毎食とりたい栄養です。青魚、鶏むね肉、卵、大豆製品を組み合わせて、体の材料をしっかり確保します。とくに青魚(さば、いわし、さんま、あじ)に多いオメガ3系脂肪酸は、体の炎症や脂質のバランスを考えるうえで注目されています。えごま油やあまに油を、加熱せずサラダにかけて使うのもよい方法です。
ビタミンDも意識したい栄養素です。鮭、さんま、しらす、きくらげ、干ししいたけなどに含まれ、日光を浴びることでも体内で作られます。晴れた日に15分ほど散歩する習慣は、それだけで意味があります。
東洋医学の視点では、余分な水分をさばく食品として、はとむぎ、あずき、とうもろこし、冬瓜、きゅうり(温かい季節に)、海藻類がよく挙げられます。めぐりを助ける食品としては、玉ねぎ、らっきょう、青魚、黒きくらげ、少量の香辛料などが知られています。胃腸を支えるものとしては、山いも、かぼちゃ、いんげん豆、しょうががあります。これらを一度にすべて揃える必要はありません。ふだんの献立に一品ずつ加えていくくらいが、無理なく続けられます。
避けた方が良い食品・飲み物
まず控えたいのが、精製された糖質です。白砂糖を多く使ったお菓子、菓子パン、白いパンや麺類の食べすぎは、血糖値を急に上げてインスリンを大量に必要とします。インスリン抵抗性が背景にある場合、この繰り返しが体質の改善を遠ざけてしまいます。
清涼飲料水やフルーツジュース、加糖コーヒーなどの甘い飲み物も注意が必要です。液体の糖は吸収が速く、気づかないうちに量が積み上がります。飲み物は水、麦茶、はとむぎ茶などを基本にしましょう。
トランス脂肪酸を含むマーガリンやショートニングを使った菓子類、揚げ物の摂りすぎも、体の状態を考えると控えめが望ましいとされます。カフェインは適量なら問題ありませんが、コーヒーを一日に何杯も飲む習慣は、睡眠の質を下げ、めぐりにも影響します。
そして漢方の視点から強くお伝えしたいのが、冷たい飲み物です。氷入りの飲料やアイスクリームを日常的にとると、胃腸のはたらきが落ち、水分をさばく力そのものが弱ります。飲み物は常温か温かいものを選ぶ。これだけでも体は変わっていきます。
日常生活での対策
体重が標準より多い方の場合、現在の体重の5〜7%を減らすことで、排卵が戻りやすくなると報告されています。体重60kgの方なら3〜4kgです。極端な食事制限ではなく、この現実的な範囲を数か月かけて達成することが目標になります。
運動は、有酸素運動と筋トレの組み合わせが理想的です。早歩きの散歩を一日30分、週に3〜5回。あわせてスクワットや腕立てなど、大きな筋肉を使う運動を週2回ほど加えると、筋肉が糖を取り込む力が高まり、インスリンの効きが改善しやすくなります。エレベーターを階段に変えるだけでも積み重なります。
睡眠も見過ごせません。夜ふかしが続くとホルモンのリズムが乱れます。日付が変わる前に休み、7時間前後の睡眠を確保したいところです。就寝1時間前はスマートフォンを手放し、ぬるめのお湯にゆっくり浸かると、寝つきが変わってきます。
ストレスとのつきあい方も大切です。妊活は結果が見えにくく、心が疲れやすい取り組みです。深い呼吸、軽いストレッチ、好きな音楽、誰かに話すこと。自分なりの息抜きを意識的に持ってください。ツボを使うなら、内くるぶしの上から指四本分のところにある三陰交(さんいんこう)は、婦人科系のお悩み全般に用いられます。ひざとくるぶしの中間あたり、すねの外側にある豊隆(ほうりゅう)は、余分な水分の停滞に使われるツボです。指の腹で気持ちよい程度に、左右それぞれ1〜2分ずつ押してみましょう。

まとめ
多嚢胞性卵巣症候群は、ホルモンのバランスとインスリンの効きにくさが絡み合い、卵胞が育っても排卵まで至りにくくなる状態です。漢方ではこれを、水滞(すいたい)、瘀血(おけつ)、気滞(きたい)、腎虚(じんきょ)といったいくつものめぐりの滞りが重なった結果と捉え、体質に合わせて桂枝茯苓丸、当帰芍薬散、六君子湯、柴胡加竜骨牡蠣湯、芍薬甘草湯などを組み立てていきます。
あわせて、はとむぎや玖瑰花、なつめといった薬膳素材を毎日のお茶や食事に取り入れ、低GIの食事、無理のない運動、質のよい睡眠を重ねていく。こうした積み重ねが、卵巣が働きやすい環境づくりにつながっていきます。
大切なのは、漢方は婦人科での治療に代わるものではないということです。排卵誘発や必要な検査は専門医のもとで受けていただき、漢方はその治療を受けとめる体づくりとして併用していただくのが、もっとも現実的で心強い形だと考えています。通院中の治療内容は、遠慮なく薬剤師にお聞かせください。
運龍堂では、体質やご状況をていねいに伺ったうえで、お一人おひとりに合わせたご提案をしています。ご来店が難しい方のために、オンライン相談(オンライン診療)にも対応しておりますので、遠方の方やお仕事でお時間の取りにくい方もお気軽にご利用ください。ひとりで抱え込まず、まずはご相談ください。
■杜の都の漢方薬局 運龍堂: https://unryudo.com/
■公式LINE: https://lin.ee/bxPNFJV
(公式LINEにご登録頂くと、限定動画を無料で見ることができます!)
■公式インスタグラム: https://www.instagram.com/unryudo/
~オンライン漢方相談~
運龍堂では、わざわざご来店いただかなくても、オンラインによる遠隔でのご相談にも対応しております。 漢方を通して、皆様の健康と生活習慣を整えられればと思います。まずはお気軽にご相談いただければ幸いです。
上記の公式LINEより、
またはお問い合わせフォーム:https://unryudo.com/contact/
からお問い合わせください。