経血量が少ない・月経が2〜3日で終わる方へ|「血」を育てて妊娠しやすい月経をつくる漢方と養生

はじめに

「最近、月経が2〜3日で終わってしまう」「ナプキンがほとんど汚れないまま終わる」——妊活に取り組む方から、こうしたご相談をいただくことが増えています。経血の量は年齢やその時々の体調によって変動するものですが、以前と比べて明らかに減った、日数が短くなったという変化は、体からのサインである場合があります。一般に、月経の持続日数は3〜7日程度、1回の経血量は20〜140mL程度が目安とされ、これを大きく下回る状態は「過少月経」と呼ばれています。東洋医学では、月経は「血(けつ)」の充実によって支えられると考え、経血量の少なさを、体の土台を見直すきっかけととらえます。ここでは、月経量が少なくなる背景と、今日から始められる養生について、運龍堂の視点から解説します。



月経量が少なくなる理由

● 西洋医学的な観点から

月経は、卵巣から分泌されるエストロゲン(卵胞ホルモン)の働きによって子宮内膜が厚く増殖し、排卵後はプロゲステロン(黄体ホルモン)が受精卵を迎える準備を整え、妊娠が成立しなかった場合にその内膜がはがれて体外へ排出される現象です。つまり経血の量は、子宮内膜がどれだけ育ったかを映し出しているといえます。一般に、正常な月経周期は25〜38日、持続日数は3〜7日、1回あたりの総経血量は20〜140mL程度が目安とされています。



総量が20mL未満にとどまる場合は「過少月経」、持続日数が2日以内で終わる場合は「過短月経」と呼ばれ、注意を要すると考えられています。背景としては、エストロゲン分泌の低下、極端なダイエットによる急激な体重減少、甲状腺機能の異常、プロラクチンというホルモンが高くなる状態、多嚢胞性卵巣症候群、子宮内膜の癒着などが挙げられます。急に量が減った、月経が来ない月があるといった場合は、自己判断で様子を見ず、婦人科でホルモン検査や超音波検査を受けることがすすめられます。



● 東洋医学(漢方)の観点から

東洋医学では、月経の状態は「血(けつ)」の量とめぐりをそのまま映すものと考えます。経血量が少ない背景として代表的なのが血虚(けっきょ)で、これは体を潤し養う血が足りなくなった状態を指します。顔色がさえない、爪が割れやすい、髪がパサつくといった様子と一緒に現れやすいとされます。次に多いのが気虚(ききょ)で、血をつくり押し出すためのエネルギーが不足した状態です。疲れやすさ、食欲のむら、声に力が入らないといった傾向を伴いやすくなります。また、生殖機能の土台を担うとされる腎の力が弱まった腎虚(じんきょ)では、周期の乱れや腰まわりのだるさ、冷えが重なりやすいと考えられています。さらに、血のめぐりが滞る瘀血(おけつ)があると、量は少ないのに塊が混じる、経血の色が暗いといった特徴が出ることがあります。これらは単独で現れるとは限らず、重なっていることも少なくありません。まず不足を補い、その上でめぐりを整えるという順序で立て直していくのが基本的な考え方です。



主な症状

経血量が少ない方には、月経そのもの以外にもさまざまなサインが現れやすいとされます。月経が2〜3日で終わる、日中ほとんどナプキンを替えなくてよい、経血の色が薄い、茶色っぽいまま終わってしまうといった変化がその代表です。あわせて、立ちくらみやめまい、動悸、寝つきが浅く夢を多く見る、手足の冷え、肌や髪の乾燥、爪がもろい、集中力が続かないといった不調を伴うことがあります。基礎体温を記録している方では、高温期が短い、体温の上がり方がゆるやかといった傾向がみられることもあります。



服用可能な漢方薬・薬膳素材

ここでは、経血量が少ない状態に対して運龍堂でご相談の多い漢方処方を5つご紹介します。いずれも体質やその時の状態によって向き不向きがありますので、選ぶ際は専門家にご相談ください。

● ①四物湯(しもつとう)

当帰・芍薬・川芎・地黄という4つの生薬から成る、補血(ほけつ=足りない血を補うこと)の基本となる処方です。血を補いながら、そのめぐりも助けるとされ、婦人科で用いられる多くの処方の土台になっています。経血の量が少なく色も薄い、顔色がすぐれない、皮膚が乾燥しやすい、産後や病後で体力が落ちているといった方に、古くから用いられてきました。潤す働きが中心の処方のため、胃腸が弱い方では食欲が落ちることがあり、その場合は食後に服用する、胃腸を整える処方と組み合わせるといった工夫が検討されます。



● ②当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)

当帰・芍薬・川芎に、白朮・茯苓・沢瀉を加えた処方で、血を補う働きと、余分な水分をさばく利水(りすい=滞った水分の排出を助けること)の働きを併せ持ちます。もともと体力があまりなく、冷え症で疲れやすく、貧血傾向でむくみやすい方に向くとされ、婦人科の領域で長く用いられてきました。経血量が少ないことに加えて、下半身が冷える、夕方になると足がむくむ、立ちくらみやめまいがあるといった方に合うことが多い処方です。妊活中の方にもよく選ばれますが、ご自身の体質に合っているかどうかの見極めが大切です。

● ③十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)

四物湯に、気を補う人参・白朮・茯苓・甘草の組み合わせを合わせ、さらに黄耆と桂皮を加えた処方です。血の不足とエネルギー不足の両方に同時に働きかけ、全身の底上げを図る点が特徴とされます。経血量が少ないことに加えて、とにかく疲れやすい、風邪をひきやすい、手足が冷えて顔色が悪い、産後や病後の回復が遅いといった方に向くとされています。しっかり補う性質の処方であるため、のぼせやほてりが強く出ている時期には向かないことがあり、その時々の体調に合わせた調整が必要になります。



● ④六君子湯(りっくんしとう)

人参・白朮・茯苓・甘草に、陳皮と半夏を加えた処方で、胃腸の働きを助けながらエネルギーを補うことを目的とします。東洋医学では、血は毎日の食べものからつくられると考えます。そのため、いくら血を補う処方を用いても、それを受け止める胃腸が弱っていては十分に活かされません。食が細い、少し食べただけでお腹が張る、みぞおちがつかえる、食後に眠くなって動けないといった方では、まず六君子湯で土台を整えてから補血の処方に進む、あるいは併用するという組み立てが選ばれることがあります。

● ⑤加味帰脾湯(かみきひとう)

人参・黄耆・白朮・茯苓・当帰・酸棗仁・遠志・竜眼肉などに、山梔子と柴胡を加えた処方です。胃腸を助けて血をつくる働きと、高ぶった気持ちや不安を落ち着ける働きを併せ持つとされます。経血量が少ないことに加えて、寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚める、考えごとが頭から離れない、不安感や動悸があるといった方に用いられてきました。妊活が長く続き、心身ともに消耗を感じている方に選ばれることのある処方です。



薬膳素材

毎日の食卓に取り入れやすい食品として、次のような素材が知られています。なつめ(棗)は、やさしい甘みがあり、胃腸をいたわりながら血を補うとされる代表的な素材です。そのまま食べるほか、スープやお粥に入れると続けやすくなります。龍眼肉(りゅうがんにく)はライチに近い果実を乾燥させたもので、血を養い、気持ちを落ち着けるとされ、なつめと一緒に煮出すお茶が定番です。枸杞の実(くこのみ)は、目の疲れや乾燥が気になる方に親しまれ、ヨーグルトやスープに数粒加えるだけで手軽に取り入れられます。桑の実(くわのみ)は、しっとりとした甘酸っぱさがあり、体を潤す果実として知られています。松の実(まつのみ)は良質な脂質を含み、乾燥しやすい方の炒め物やサラダによく合います。金針菜(きんしんさい)は鉄分を含む乾燥した花のつぼみで、水で戻して和え物やスープに使えます。みかんの皮(陳皮)は、香りによって気のめぐりを助けるとされ、補う素材が重く感じられるときに少量添えるとよい相棒になります。いずれも一度に大量にとるのではなく、少しずつ毎日続けることが養生の基本です。

また運龍堂では、鹿茸(ろくじょう)、亀板(きばん)、スクアレンもお取り扱いしています。いずれも体の土台を支える目的で古くから重視されてきたもので、体質やご状況によって向き不向きがあります。ご関心のある方は、店頭またはオンラインでのご相談の際に、お一人おひとりの状態を伺ったうえでご案内いたします。



注意が必要な漢方薬

漢方薬は自然の生薬からつくられていますが、どなたにでも安全というわけではありません。とくに妊娠の可能性がある時期には、大黄(だいおう)、芒硝(ぼうしょう)、桃仁(とうにん)、紅花(こうか)、牡丹皮(ぼたんぴ)、麝香(じゃこう)といった、強く下したり血のめぐりを強く動かしたりする生薬を含む処方は、慎重な判断を要するとされています。経血量が少ないからといって、活血(かっけつ=血のめぐりを促すこと)を目的とした処方を自己判断で強めることは避けたいところです。

また、多くの処方に含まれる甘草(かんぞう)は、複数の漢方薬を重ねて長期間飲み続けると摂取量が過剰になり、むくみ、血圧の上昇、手足のだるさなどを伴う偽アルドステロン症を起こすことがあります。麻黄(まおう)は動悸や不眠、胃のもたれを招くことがあり、附子(ぶし)はのぼせやほてり、動悸につながる場合があるため、体質によって注意が必要です。市販の漢方薬やサプリメントを、婦人科で処方された薬と自己判断で併用することは避け、必ず薬剤師や登録販売者などの専門家にご相談ください。

おすすめの食品

血を育てる食事の基本は、材料をきちんと届けることと、それを受け止める胃腸を守ることの2つです。まず意識したいのは鉄分とたんぱく質です。赤身の牛肉や豚肉、レバー、かつお、まぐろ、いわし、あさり、しじみなどは、血の材料となる鉄分を含む代表的な食材です。卵、大豆製品、鶏肉といったたんぱく質も、毎食少しずつ取り入れましょう。植物性の食材では、小松菜、ほうれん草、ひじき、切り干し大根、黒豆、黒ごま、黒きくらげなど、色の濃いものが昔から血を養うとされてきました。

鉄分は、ビタミンCを含むブロッコリーやパプリカ、柑橘類と一緒にとると吸収が高まると考えられています。また、体を温める食べ方も大切です。生姜、ねぎ、にら、シナモンなどを少量添え、汁物や煮込みといった温かい調理法を選ぶと、胃腸の負担が軽くなります。朝食を抜かない、主食をきちんととるといった当たり前のことも、血をつくるうえでは大きな意味を持ちます。無理な糖質制限や置き換えダイエットは、経血量の減少につながることがあるため、妊活中は控えめにしておきたいところです。

避けた方が良い食品・飲み物

まず控えたいのは、体を冷やす飲食です。氷入りの飲み物、冷たいスムージー、アイスクリーム、生野菜ばかりのサラダなどが続くと、胃腸の働きが落ち、血をつくる力が弱まりやすくなります。夏場であっても、飲みものは常温以上を基本にしましょう。カフェインの多いコーヒーや濃い緑茶は、食事と一緒にとると鉄分の吸収を妨げるとされるため、食後1時間ほど時間を空けてから楽しむのがおすすめです。アルコールの飲みすぎ、スナック菓子や揚げものなど脂質の多い食品、甘い菓子パンや清涼飲料水の常用も、胃腸に負担をかけ、必要な栄養が不足する原因になります。極端な食事制限や単品ダイエットは、経血量の減少に直結しやすいため、妊活中は避けてください。

日常生活での対策

第一に見直したいのは睡眠です。東洋医学では、夜の休息の間に血が養われると考えます。日付が変わる前に横になり、7時間前後の睡眠時間を確保することを目標にしましょう。就寝の1時間前からスマートフォンの画面を控えるだけでも、寝つきが変わってきます。次に運動です。激しい運動よりも、ウォーキングやストレッチ、ヨガのように無理なく続けられるものを1日20〜30分ほど行いましょう。ふくらはぎをよく動かすと、下半身のめぐりが助けられます。三つ目は保温です。腰まわりと足首を冷やさない服装を心がけ、シャワーだけで済ませず、38〜40度のお湯に10〜15分ゆっくりつかる習慣をつけてください。

四つ目はストレスとのつき合い方です。気のめぐりが滞った気滞(きたい)の状態は、月経の乱れにつながるとされています。深い呼吸をする時間や、好きなことに向かう時間を意識して確保しましょう。ツボでは、内くるぶしの中心から指4本分ほど上にある三陰交(さんいんこう)、膝の内側の少し上にある血海(けっかい)がよく知られており、心地よいと感じる強さで押したり、温めたりするとよいとされています。気になる症状が続く場合は、無理をせず婦人科を受診してください。



まとめ

経血量が少ない、月経が2〜3日で終わってしまうという変化は、体が「材料が足りていない」「めぐりが滞っている」と教えてくれているサインかもしれません。西洋医学ではホルモンや子宮内膜の状態から、東洋医学では血の不足やめぐりの滞りという視点から、その背景を読み解いていきます。漢方では、四物湯や当帰芍薬散で血を補い、十全大補湯で全身を底上げし、六君子湯で血をつくる胃腸を整え、加味帰脾湯で心身の消耗をいたわるというように、その方の状態に合わせて処方を選びます。

あわせて、食事・睡眠・保温といった日々の養生を重ねていくことが、妊娠しやすい体づくりの土台になると考えられています。ただし、急に経血量が減った、月経が来ない状態が続くといった場合は、まず婦人科での検査を受けてください。運龍堂では、お一人おひとりの体質やご事情を丁寧に伺いながら、無理なく続けられる漢方と養生をご提案しています。仙台の店頭でのご相談のほか、オンラインでのご相談にも対応しておりますので、遠方にお住まいの方もどうぞお気軽にお声がけください。


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